平安桜〜金の桜〜

2015年お正月小説。お年玉はどこへ消えた!?

 出来心だった。

「明日は行脚くんたちにお年玉をあげましょう。ふふ、ちゃあんとここにしまってあるんだから」

 あんな台詞聞かなければ良かったのだ。四納が丁寧に戸棚に金銭を隠しているのをばっちり見てしまったものだから、魔が差した。

「ない!!」

【12歳以下立ち入り禁止】の札を一瞥してから、葉奥は簾と格子でぴしゃんぴしゃんに閉められた部屋の中に入った。真っ暗な部屋の中で四納が震えている。

「どうしたんだよ」

「あっ……葉奥くんか、ないんですよ!」

「なにが?」


          ○
「お年玉?」

「行脚くんたちに差し上げようと思っていたお年玉が見当たらないんです……確かにここに入れておいたのに!」

 騒ぎを聞き付けてオーバー12がぞくぞくと集まってきた。

「四納さんって意外とお金の管理雑なのねー」

 バリバリと煎餅をつまみながら狐黄。

「違う! ちゃんと入れといたっちゅーの!」

「それを守りきれてこそ完璧な管理っていうんだぜ」

「わらわが立て替えてやってもよいぞ」

「いえ、それが……」

 なにか問題でも?と首を傾げる小梅の君を四納はひたと見つめ返した。重々しく、一言一言ゆっくりと喋った。

「皆さんから預かった分も、ございましたので」

「──────あ。えーと、わらわ昼からお兄様と初詣行く約束しとるんじゃった……」

「あー! 逃げた! 逃げなすった!」

 そそくさと立ち上がる小梅の君をびしびしと指差してがなりたてた。しかし、ふと見渡すと、皆が四納を見て白々しくなっているではないか。──なくしたのお前だろ。14の小娘にたかってんじゃないよ。と。

「仕方ありませんわね〜。なけなしのお金だったけど……」

「あ、あ……式部貴女までそんな言い方を」

「泥棒か?」

 神楽が今更なことを聞いた。勿論彼もお年玉を四納に託した一人である。

「しかねえだろうよ他になんかあんのか」

「いや。どこから入ってきたのかなと思って」

「確かにそうですね。ここは奥の部屋ですし、警備も厳重な筈……」

「赤犬であろう」

 寝転がって尻をかきながら尚太女がどうでもよさそうに吐いた。

「あやつだったら鍵も警備も意味ナシではないか」

「なるほど〜……」声が揃う。

「ま、子供らには、辛抱せよと伝えるしかあるまい」

 いつになく大人びた言い草である。これには平素尚太女を馬鹿にしている四納もぐうの音が出ない。

「そ、うですねえ……それか急いでお金下ろしてくるか」

「正月だから銀行は休みよ」

 いつの間にか戸口に夏衣が立っていた。なるほど、このような感じで気配を消されれば気付かないかもしれぬ。と、妙なところで感心したりする。

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