Kaaaaaaama

Misacoの、Misacoによる、Misacoの為だけのカーマ萌え吐き出し小説。

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今年も春がやってきた。

チャイトラ月のこの季節、かの神殿の巫女たちはこの上なく色めき立つ。

朝食もそこそこに沐浴を済ませると、上等のサリーに身を包み、頭には摘みたての花を弾ませて広間に集まった。


「あなた、今日凄くきれいだわ」

「ねぇ、まだかな。呼びに行った方がいいんじゃない」

「もう、ちょっとは落ち着きなさいったら」


彼女たちの頬はみな薔薇色だ。
恋をしているのだ。

恋する巫女とは絶景である。
ぜひその目に焼き付けて頂きたい。



さて、彼女らは何を待っているのか?

その張本人がやってきた。



「おはよーっ!」



『きゃーっ!カーマ様!!』



黄色い声に迎えられ、カーマ様なるその御仁が奥の間から顔を出す。

と思うと、祭壇をくるりと飛び越え、もう次の瞬間には巫女たちの前に立っていた。


さて、その華やかな様相たるや、筆舌に尽くせるか。




やってみよう。



咲き誇る色とりどりな花の刺繍を施した(要するに花柄の)クルタは短めで、その上には目の覚めるような紅のストール。

これは地に着くほど長く、丸みを帯びたクッサの先で優雅に影をたなびかせる。

今、黄金の冠に朝日が触れれば、柔らかな光の滴が大粒のポルキを縁取ってあふれ出し、これがまさに暗褐色の髪との絶妙なコントラストになるのであった。


華美、ここに極まれり。


しかしこれだけ派手なものを身にまとっていながら、何よりも人を引きつけるのは他でもない彼の瞳だったりする。


今では神殿を出て花嫁となった鹿の目をした巫女が、常々このように語っていた。


「たぶんカーマ様は、マーナサ湖を両手にすくってそれを眼にあてがいなさったのよ。だって普通の瞳じゃサイズが小さすぎますものね」


なるほど言われてみれば、さざ波のように揺れる翠の双玉は水面のそれによく似ていた。

大きいのも事実だ。


寝坊したことなど微塵も感じさせず、カーマ青年はその大きな瞳で瞬きを一つし、


「待った?」


首を傾けて微笑んだ。


長い髪の一束が、指で弾かれた竪琴の弦を思わせる動きで細い肩を滑り落ちる。

同時に広がる甘いジャスミンの香りに、巫女一同はほぅっと息を吐いた。


ちなみに、インドではジャスミンの花は媚薬の成分としても有名である、とさらりと記しておく。



この流れで言うのもあれだが、彼女らは別にカーマに恋しているわけではない。

いや、ある意味ではそうと言えるだろうか。


それぞれ違う好い人がおりながら、巫女たちは口を揃えて「意中のあの人はちょっとカーマ様に似たところがあるの」と言うのだった。


そのこころは?


言うまでもなく彼女たちは、恋人に愛の面影を見ているのである。



そう、カーマは人ではない。



世に尽きることのない三大欲求の一つ、愛欲を司る神であった。

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